看取り期における家族への声掛けのタイミングは?コミュニケーションで気を付けるべきことを解説

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この記事では、看取り期における家族への声かけの重要性と具体的なタイミング、そしてコミュニケーションで特に注意すべき点について解説します。終末期を迎える患者様とそのご家族にとって、穏やかで心温まる時間を過ごすためには、適切な声かけとコミュニケーションが不可欠です。看護師をはじめとする医療・介護従事者の皆様、そして将来的に看取りに直面する可能性のある方々にとって、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

目次

はじめに - 看取り期における家族への声かけの重要性

家族への声かけが重要な理由

看取り期は、患者様本人だけでなく、ご家族にとっても非常に大切な時間です。適切な声かけは、ご家族の不安を軽減し、患者様との絆を深め、後悔のないお別れを迎えるためのサポートとなります。終末期において、家族は患者様の精神的な支えとなるだけでなく、介護や意思決定においても中心的な役割を担います。だからこそ、医療・介護従事者は、ご家族の気持ちに寄り添い、適切なタイミングで声かけを行う必要があるのです。

看取り期における家族への声かけのタイミング

終末期を意識し始めた時

終末期を意識し始めた時、つまり、積極的な治療が難しくなり、緩和ケアへと移行する段階で、ご家族への丁寧な声かけが求められます。「今後の治療方針について」「患者様の希望について」「ご家族としてどのようなサポートができるか」など、具体的な話し合いの機会を設けることが重要です。この時期にしっかりとコミュニケーションをとることで、ご家族は心の準備を始め、患者様の意思を尊重したケアをすることができます。

容態が変化した時/急変時

家族への連絡 - タイミングと伝え方

患者様の容態が変化した時、特に急変時には、迅速かつ正確な情報伝達が不可欠です。連絡はできる限り早く、電話など直接話せる手段で行いましょう。伝えるべき内容は、患者様の現在の状態、考えられる原因、そして今後の方針です。具体的な状況と合わせて、ご家族の意向を確認することが大切です。看護師は急変時、家族の不安を最小限に抑えられるよう努めましょう。

心停止/呼吸停止時の対応

心停止や呼吸停止といった緊急事態が発生した場合は、まず救命処置を行うと同時に、速やかにご家族へ連絡します。連絡の際には、「現在、心肺蘇生を行っています」と状況を伝え、病院へ向かうように促します。到着後には、救命処置の結果や今後の見通しについて、医師から詳しく説明を行います。ご家族が精神的に大きな負担を抱えていることを理解し、寄り添う姿勢を忘れないようにしましょう。

臨終が近づいた時

家族を呼ぶタイミング - 医師との連携

臨終が近づいた際には、ご家族にできるだけ早く連絡し、患者様のそばにいてもらうことが望ましいです。家族を呼ぶタイミングは、医師や看護師が患者様の状態を総合的に判断し、予測される時間をご家族に伝えることが重要です。医師と連携し、「〇〇様が、まもなくお亡くなりになる可能性があります。できれば、すぐに病院へお越しいただけないでしょうか」といったように、状況を具体的に伝え、ご家族が後悔のないお別れができるよう配慮しましょう。

家族への事前説明 - 心理的準備を促す

臨終が近づいていることを伝える際には、ご家族の心理的な準備を促すことも大切です。具体的には、死が近づくサイン(呼吸の変化、意識レベルの低下など)を事前に説明し、心の準備ができるようにサポートします。また、ご家族が患者様のそばでどのように過ごしたいか(手を握る、話しかけるなど)を確認し、できる限り希望を叶えられるように配慮しましょう。

逝去後

亡くなった家族にかける言葉

大切なご家族が亡くなられた直後、どのような言葉をかければ良いのか、悩まれる方は少なくありません。看護師や介護職として、遺族にかける言葉は、故人を偲び、ご家族の悲しみに寄り添うものでなければなりません。以下に、状況に応じた具体的な言葉の例を挙げます。

  • 一般的なお悔やみの言葉:
    • 「心よりお悔やみ申し上げます。」
    • 「この度は、誠にご愁傷様でございます。」
  • 故人との関係性に合わせた言葉:
    • (親しい間柄の場合)「〇〇様(故人)には、大変お世話になりました。安らかにご永眠されますよう、心よりお祈り申し上げます。」
    • (介護施設の場合)「〇〇様(入所者)との日々は、私たちにとっても大切な思い出です。安らかにお眠りください。」
  • ご家族への労いの言葉:
    • 「〇〇様(故人)も、皆様に看取られて、安らかにお旅立ちになられたことと思います。」
    • 「皆様、本当にお疲れ様でございました。どうぞご無理なさらないでください。」

これらの言葉に加えて、故人の人となりや、生前のエピソードなどを織り交ぜることで、より心のこもったお悔やみを伝えることができます。ただし、宗教や宗派によって適切な言葉遣いが異なる場合があるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

死亡確認後の対応 - 家族への寄り添い

死亡確認後、ご家族は深い悲しみの中にあります。看護師や介護職は、ご家族の気持ちに寄り添い、精神的なサポートを行うことが重要です。具体的には、以下のような対応が求められます。

  • 静かに寄り添い、話を聞く: ご家族が落ち着くまで、そばに寄り添い、話を聞きましょう。無理に励ますのではなく、ご家族の感情を受け止め、共感することが大切です。
  • 手続きや葬儀に関する情報提供: 死亡診断書の発行、死亡届の提出、葬儀の手配など、必要な手続きについて、わかりやすく説明します。葬儀社や行政機関の連絡先など、具体的な情報を提供することも、ご家族の負担を軽減する上で重要です。
  • ご家族の希望を尊重する: 故人との最後のお別れの時間を、ご家族の希望に沿って過ごせるように配慮します。例えば、故人の愛用品をそばに置いたり、思い出の音楽を流したりするなど、ご家族の意向を尊重した対応を心がけましょう。
  • 精神的なケアの継続: 死亡後のご家族は、悲嘆(グリーフ)と呼ばれる心理的なプロセスを経験します。必要に応じて、専門家(カウンセラーや精神科医など)を紹介するなど、継続的な精神的ケアを提供することが重要です。

看取り期における家族とのコミュニケーションの取り方

コミュニケーションの基本

看取り期における家族とのコミュニケーションは、患者様を中心とした全人的なケアを提供する上で、非常に重要な要素です。ご家族の不安や疑問を解消し、安心して患者様の最期を迎えられるよう、以下の3つの基本を意識しましょう。

傾聴 - 感情を受け止める

傾聴とは、相手の話に耳を傾けるだけでなく、言葉の裏にある感情や気持ちを理解しようとする姿勢のことです。ご家族の言葉だけでなく、表情や態度からも感情を読み取り、共感的な理解を示すことが大切です。例えば、涙を流しながら話すご家族には、「つらいですね」「お気持ちお察しいたします」といった言葉をかけ、感情を受け止める姿勢を示しましょう。

共感 - 寄り添う姿勢を示す

共感とは、相手の気持ちを理解し、同じように感じることを意味します。ご家族の悲しみや不安、怒りなどの感情に寄り添い、「〇〇様を亡くされて、本当にお辛いですね」「何かできることがあれば、何でもおっしゃってください」といった言葉をかけることで、ご家族は「理解してもらえている」と感じ、安心感を得ることができます。

明確な情報提供 - 状況を正確に伝える

患者様の病状や治療方針、今後の見通しなどについて、ご家族に正確かつ分かりやすく情報提供することは、信頼関係を築く上で不可欠です。専門用語を避け、平易な言葉で説明するよう心がけましょう。また、ご家族からの質問には丁寧に答え、疑問や不安を解消することが重要です。例えば、病状が悪化した場合、「〇〇様の呼吸が少し苦しそうですが、酸素投与を行っています。痛み止めの薬も使用していますので、ご安心ください」といったように、具体的な状況と合わせて、ご家族が安心できるような情報提供を心がけましょう。

家族の心理過程を理解する

終末期の家族mp心理過程

終末期を迎える患者様のご家族は、様々な心理的なプロセスを経験します。一般的には、否認、怒り、取引、抑うつ、受容という5つの段階を経るとされています(参考:E・キューブラー・ロス著、鈴木晶訳:死ぬ瞬間-死とその過程について)。 しかし、これらの段階は直線的に進むものではなく、行ったり来たりする場合もあります。看護師や介護職は、ご家族の心理状態を理解し、それぞれの段階に合わせた適切なサポートを行うことが重要です。

  • 否認: 患者様の状態を受け入れられず、「まさか」「そんなはずはない」と現実を否定しようとする段階。
  • 怒り: なぜ自分がこんな目に遭うのか、なぜ大切な人が苦しまなければならないのか、といった怒りの感情が湧き上がる段階。
  • 取引: 神様や運命に対して、「〇〇すれば助けてくれるのではないか」と取引しようとする段階。
  • 抑うつ: 悲しみや絶望感に打ちひしがれ、意欲を失ってしまう段階。
  • 受容: 患者様の状態を受け入れ、残された時間を大切に過ごそうとする段階。

不安やストレスへのケア

終末期を迎える患者様のご家族は、様々な不安やストレスを抱えています。例えば、「患者様の痛みが和らぐだろうか」「最期をどのように迎えさせてあげれば良いのだろうか」「自分はちゃんと看病できるのだろうか」といった不安が挙げられます。看護師や介護職は、ご家族の不安やストレスを軽減するために、以下のようなケアを提供することが重要です。

  • 不安や疑問に寄り添う: ご家族の不安や疑問を丁寧に聞き取り、共感的な態度で接することで、安心感を与えることができます。
  • 情報提供: 患者様の病状や治療方針、今後の見通しなどについて、正確かつ分かりやすく情報提供することで、不安を軽減することができます。
  • 具体的なアドバイス: 患者様のケア方法や、ご家族がどのように過ごせば良いかなど、具体的なアドバイスを提供することで、自信を持って看病に臨めるようにサポートします。
  • 休息の推奨: 疲労や睡眠不足は、ストレスを増大させる原因となります。ご家族に十分な休息を促し、必要に応じて、レスパイトケア(介護者の休息を目的としたサービス)の利用を検討することも重要です。
  • 精神的なサポート: ご家族の精神的な負担が大きい場合は、カウンセラーや精神科医などの専門家を紹介することも検討しましょう。

看護師が心がけること

看取り期における家族への声かけやコミュニケーションにおいて、看護師は専門職としての知識や技術を活かし、以下のような点に心がけることが重要です。

専門用語を避ける

医療や介護の現場では、専門用語が頻繁に使われますが、一般の人は理解できないことが多く、かえって不安を煽ってしまう可能性があります。ご家族に説明する際は、できる限り専門用語を避け、平易な言葉で分かりやすく説明するように心がけましょう。例えば、「SpO2が低下しています」と言う代わりに、「酸素の値が少し下がっています」と言うなど、具体的な状況と合わせて、ご家族が理解しやすい言葉で説明することが重要です。

家族のペースに合わせる

ご家族の理解力や受容力は、それぞれ異なります。一方的に情報を提供するのではなく、ご家族のペースに合わせて、ゆっくりと丁寧に説明することが大切です。質問しやすい雰囲気を作り、疑問や不安を解消しながら、コミュニケーションを進めていきましょう。また、ご家族が感情的になっている場合は、無理に話を進めようとせず、落ち着くまで寄り添う姿勢が重要です。

複数職種と連携する

看取り期におけるケアは、医師、看護師、介護職、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなど、多職種が連携して行うチーム医療が基本です。ご家族への情報提供や意思決定支援においても、それぞれの専門性を活かし、連携して対応することが重要です。例えば、病状の説明は医師が行い、看護師は日常生活のケアや精神的なサポートを行い、ソーシャルワーカーは経済的な支援や手続きに関する情報を提供するなど、それぞれの役割を明確にし、連携することで、ご家族にとってより包括的な支援を提供することができます。

終末期患者の家族の持つ10のニーズを理解する

終末期を迎える患者様の家族は、様々なニーズを抱えています。これらのニーズを理解し、適切に対応することで、ご家族の満足度を高め、より良い看取りのケアを提供することができます。(参考:日本終末期ケア協会 - 看取り期の家族への声かけ

1. 患者の状態を知りたい

ご家族は、患者様の病状がどうなっているのか、これからどうなっていくのか、どのような治療やケアが行われているのかについて、正確な情報を求めています。

  • 具体的な情報: 病状の進行、治療の内容と目的、起こりうる変化、今後の見通しなど
  • 支援のポイント: 専門用語を避け、分かりやすい言葉で丁寧に説明し、質問しやすい雰囲気を作る。定期的な情報提供と、状況変化に応じた随時説明を行う。

2. 患者のそばにいたい

ご家族は、できる限り患者様のそばにいて、見守りたい、触れ合いたいと思っています。

  • 支援のポイント: 患者様の意向を尊重しつつ、ご家族が安心して付き添える環境を整える。付き添いやすい時間帯や場所を考慮する。

3. 患者の役に立ちたい

ご家族は、患者様のために何かできることはないかと考えています。身の回りの世話をしたり、励ましたりすることで、患者様を支えたいと思っています。

  • 支援のポイント: ご家族ができる範囲でケアに参加できるよう、情報提供や簡単な方法の指導を行う。感謝の気持ちを伝え、ご家族の役割を認める。

4. 感情を表出したい

患者様の病状に対する不安や悲しみ、怒りなど、様々な感情を抱えるご家族は、それらの気持ちを表に出したいと思っています。

  • 支援のポイント: ご家族の言葉に耳を傾け、感情を受け止め、共感する姿勢を示す。安心して気持ちを話せる場を提供する。

5. 医療者から受容と支持、慰めを得たい

ご家族は、医療者からの温かい言葉や励まし、共感を求めています。自分たちの気持ちを理解し、支えてくれる存在を必要としています。

  • 支援のポイント: 丁寧な言葉遣いを心がけ、ご家族の気持ちに寄り添ったコミュニケーションを行う。不安や疑問に真摯に対応する。

6. 患者の安楽を保証してほしい

ご家族は、患者様が苦痛なく、安らかに過ごせることを願っています。

  • 支援のポイント: 痛みのコントロールや症状緩和に努め、患者様の苦痛を最小限にする。安楽な体位や環境を整える。

7. 家族員より慰めと支持を得たい

同じように患者様を心配する他の家族からの理解や支えを求めています。

  • 支援のポイント: ご家族間の情報共有を促し、互いに支え合えるような雰囲気を作る。必要に応じて、家族会議などの場を設ける。

8. 死期が近づいてきたことを知りたい

患者様の状態が変化し、死が近づいていることを、ご家族は心の準備のために知りたいと思っています。

  • 支援のポイント: 状況を慎重に伝え、ご家族が心の準備をする時間を持てるように配慮する。今後の見通しについて、可能な範囲で具体的に説明する。

9. 夫婦間(患者―家族間)で対話の時間を持ちたい

患者様とご家族の間で、これまでのことや感謝の気持ち、残された時間について話し合う時間を持ちたいと思っています。

  • 支援のポイント: 患者様の状態に合わせて、静かに話せる環境を整える。必要に応じて、医療者が会話のきっかけを作るなどのサポートを行う。

10. 自分自身を保ちたい

患者様の看病をする中で、ご自身の心身の健康や生活も大切にしたいと思っています。

  • 支援のポイント: ご家族の休息時間を確保できるよう、レスパイトケアなどの利用を提案する。ご家族自身の健康状態にも気を配り、必要に応じて相談窓口を紹介する。

看取り期における家族ができること

終末期において、ご家族は患者様にとってかけがえのない存在です。ご家族ができることはたくさんあります。

患者のそばにいること

患者様にとって、ご家族がそばにいてくれることが、何よりも心の支えになります。手を握ったり、話しかけたり、ただ静かに寄り添ったりするだけでも、患者様は安心感を得ることができます。

思い出を語り合うこと

患者様との思い出を語り合うことは、患者様とご家族にとって、かけがえのない時間となります。昔の写真を見たり、旅行の話をしたり、子供の頃のエピソードを話したりすることで、患者様の心を満たし、穏やかな気持ちで過ごせるようにサポートしましょう。

感謝の気持ちを伝えること

日頃なかなか言えない感謝の気持ちを伝えることは、患者様とご家族の絆を深める上で非常に重要です。「ありがとう」「感謝しています」といった言葉だけでなく、具体的なエピソードを交えて感謝の気持ちを伝えることで、より心に響くメッセージを届けることができます。

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